CVT

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CVTの仕組みとメリット・デメリットは?ATとの違いを解説!

クラッチペダルを操作しなくても、アクセルを踏んでいるだけで自動的にシフトがチェンジする変速機を、「オートマチックトランスミッション(以下ATと表記)」と呼び、現在ほとんどの乗用車に採用され、運転免許が「AT限定」という方も少なくありません。

 

そして、ATという大きなくくりの中にはいくつかの種類が存在し、近年搭載車種が増加しているのが「CVT」という変速機であり、従来のATとはメカニズム的にもドライビング・フィーリング的にも、大きな違いが存在します。

 

今回は、知ってそうで実は意外と知らないCVTの仕組みやメリット・デメリット、さらにATとの決定的な違いなどについて、元メカニックである筆者が徹底解説いたします。

 

 

CVTとは?仕組み・構造

CVTプーリーの画像
出典:Honda Precision Parts Manufacturing

 

CVTとは、「Continuously Variable Transmission」の頭文字を取った略語であり、直訳するなら「絶えずに可変する伝動装置」となりますが、業界的には「無段変速機」あるいは「連続可変式トランスミッション」と呼びます。

 

基本的な構造は、エンジン側(A)とタイヤ側(B)の双方に、2つの円錐状パーツ(プーリー)が互いに尖ったほうを中央に向け、ベルトを挟み込むような形で2組並んでおり、摩擦力を利用してAからBへ動力を伝える仕組みになっています。

 

そして、プーリーの円盤はシャフトに沿って移動できるようになっており、2つのプーリーの間の溝を通っているベルトの軌道直径を変更することで、得られるトルクを「無段階」で変更するのです。

 

最もトルクが求められる発進時は、A側ベルトの軌道直径が小さくB側は大きい、つまり「低速レンジ」と同じ状態、車速が上がるにつれ両者の比率は均等になり、さらにスピードがのってくるとA・Bの軌道直径は逆転し、「高速レンジ」状態になります。

 

CVTプーリーの画像2
出典:MOTOWN21

 

本当はもっと細かい数値ですが、上表における「低速走行時」のベルト軌道直径比が「1:2(A:B)」の場合、エンジンが「2,000回転」してもタイヤは半分の「1,000回転」しかしないので、スピードは出ませんが「てこの原理」によって大きなトルクが発生します。

 

一方、高速走行時の軌道直径比が「2:1(A:B)」だとすると、トルクは出ませんが同じエンジン回転数でタイヤは「4,000回転」するので、計算上「4倍」のスピードを出すことが可能という寸法です。

 

また、CVT自体では逆回転できないため、バック走行時は組み併せた「遊星ギア」などで逆転、理論上前進と同スピードで走行できますが、安全確保のため「リミッター」がかけられています。

 

現在主流なのは、ここで解説した摩擦力を利用したベルト式及びチェーン式CVTで、ベルトは低トルクエンジンを搭載する軽量車種、後者は高トルクが必要な重量車種に採用されることが多くなっています。

 

「ん〜…、ボチボチ訳が分からなくなってきた!」という方は、世界的自動車部品・電動工具メーカーである「ボッシュ」がYouTubeで公開している、

 


こちらの解説動画が非常にわかりやすいので、是非ご参照ください。

 

ちなみに、ベルトやチェーンが存在しない「トロイダル式」や、トヨタのHY車種に採用されている「電気式」などもありますが、正直これらの仕組みは複雑過ぎて筆者はもちろん、読者の皆さんも「頭痛」がしてくると思うので今回は割愛いたします。

 

CVTのメリット・デメリット

 

さて、CVTの仕組みについて解説しましたが肝心なのはここから、メカニズムを完ぺきに理解できなくてもメリット・デメリットさえ知っていれば、今後乗り換えを検討する際の大きな判断材料にできます。

 

という訳でこの項では、CVTの搭載によって発生するメリットはもちろん、構造上いかんともしがたいデメリットについて、CVT・AT・MTすべてを所有する「ドライバー」としての実感も含め、整理しておきましょう。

 

 

CVTのメリット1「燃費の向上」

 

現在、国内で新車販売されている軽自動車の約8割、普通車でも約7割までCVT普及してきたのは、エンジンから発生するエネルギーを効率よく伝えることが可能なため、「燃費向上」を強く期待できる点が、最大の理由として挙げられます。

 

ATの場合、エンジンの回転数の上昇とともに車は加速をし、減速すれば再び低回転域に戻りますが、CVTは減速しても回転数が下がらないまま「高回転域でキープ」されます。

 

車のエンジンには最も燃焼効率が良くなる、「トルクバンド」と呼ばれる回転域が存在し車種によって異なるものの、一般的に「3,000〜4,000回転」がそれにあたり、CVTでは低速時もこのトルクバンドの範囲で走行可能なのです。

 

例えば、長い下り坂の後すぐ長い登り坂がある道を自転車で走行する際、下り坂で上がったせっかくスピードをわざわざ緩め、ペダルを一生懸命濃いで坂を登っていくのが「AT」で、上がったスピードをそのまま生かし、登り坂に突入するのが「CVT」という感じ。.

 

人の「スタミナ」を燃費とするなら、どちらの消耗が少ないかすぐにわかるように、トルクバンドで常に走行できるCVTは、特に「低速走行時」の燃費性能おいてATを上回ることが多くなってくるのです。

 

CVTのメリット2「ショックの少ないスムーズな加減速」

 

AT車に乗っていると、車速が変化するたび「ガクンガクン」と、シフトチェンジに伴うショックを感じますが、プーリーとベルトで滑らかに無段変速するCVTでは、この不快なショックがほとんど発生しません。

 

ただ、変速ショックがなく回転数(エンジン音)もほとんど変化しないため、誕生当初のCVT車は「ぬめっとした加速が気持ち悪い」とか、「こんなの大きなスクーターだ」などと揶揄する声も、ネット上にまん延していた時期もありました。
しかし、近年では日産が開発した「エストロニックCVT」という、複変速機を備える次世代型CVTが誕生しており、以前のような加速時のもたつき感が大幅に改善されています。

 

【主な採用車種】

 

・日産:シルフィ、ノート(ガソリンモデル)、マーチ、デイズ&デイズルークス
・スズキ:イグニス、スイフト(1,2Lモデル)、ソリオ&ソリオバンデット、アルト、ラパン、ワゴンR、スペーシア、ハスラー、及びOEM
・三菱:デリカD2、ミラージュ、ekスペース、ekワゴン

 

また、トヨタもアイシンAWと共同で、従来のCVT無段変速機構に発進ギアを追加した、「ダイレクトシフトCVT」を開発しレクサス・UX、及び2019年4月日本で復活を遂げたかつての人気SUV、「RAV4」のガソリンモデルに採用。

 

優れた燃費性能とショックの少なさは活かされつつも、CVT車を運転していることを忘れてしまうほどのリニア感が実現しており、RAV4の持ち味である悪路走破性の高さはそのままだと評価も上々なので、興味がある方は是非試乗してみてください。

 

CVTのメリット3「車体の軽量化・小型化に有利」

 

後程解説するATとの違いを見ればすぐにわかりますが、CVTは部品点数が少なく多段化が進んでいるATより構造的にもシンプルであるため、軽量かつ小型な状態でパワートレインに組み込むことが可能です。

 

軽量化は燃費性能向上につながるほか、シンプルで小型なため開発・製造・改良過程で発生するコストが安上がりなうえ、前述したような複変速機や発進用ギアを組み込む「スペース的」余裕も、まだまだ多く残されています。

 

一方のATはと言えば、MTからの移行当初の3段変速から4・5・6と次第に段数が増え始め、最近では7・8段変速も当たり前、2017年登場した新型レクサスLSに至っては、V6ツインターボエンジンに「電子制御式10速AT」が組み合わされています。

 

ATが年々多段化している理由は、同じ高さを登るなら階段の段数を増やしたほうがスムーズでラクとおなじ理屈で、隣接するレンジのステップ比が小さくなれば、それだけ変速ショックは小さくなり、滑らかな加速と静粛性の高さを得られるからです。

 

また、常に少ない労力で階段を登ることができればて威力を消耗しない、つまりCVT一番のストロングポイントである、高い燃費性能すら獲得できるという寸法です。

 

ここからがパラドックス的で面白いポイントなのですが、ATの多段化を突き詰めていたある日のこと優秀な日本のエンジニアたちは、無段であるCVTこそ国内の車事情にマッチした無限の可能性を秘める、「究極の多段変速機」であることに気付いたのです。

 

要するに多少もたついても移動距離が短い場合、乗ったまま移動できる「エスカレーター」で十分、地上100階まで1分足らずで到達する「超高速エレベーター」のように、膨大な開発費と製造コストがかかる性能は、ハッキリ言って「無用の長物」です。

 

国土が広大で長距離移動も多い海外向けはともかく、頻繁にストップ&ゴーを繰り返す国内向けに、多段ATを採用するメリットがほとんどないため、前出のレクサスやホンダ・アコードなどの高級車もしくは、海外専売モデルへしかほとんど採用されていません。

 

CVTのデメリット

 

続いてデメリットですが、これまでCVT最大の弱点はドライバビリティの悪さと言われ続け、エンジン回転だけが高まって加速感がついてこない違和感を「ラバーバンド・フィール」と呼び、ヨーロッパではCVTの代名詞になっています。

 

また、もう1つの弱点としてCVTのプーリー、特にベルト部分が滑りやすいため構造的に高排気量のハイパワーエンジンには、不向きである点も指摘されています。

 

しかし、現在のCVTは操作性がダイレクトになってきていますし、そもそもドライバビリティなんてものは、F1やGTなどのモータースポーツ記事でチラホラ見かける、プロレーサーが気にする指針。

 

正直、MTからATへの移行をあっさり受け入れたのに、CVTへ進化する時だけドライバビリティが悪いなんて専門用語を持ち出すのは、難癖をつけているにすぎないと筆者は思いますし、慣れさえすればスマートでイージーな走行性能に必ず満足するはずです。

 

加えて、トヨタのダイレクトシフトCVTのように、高排気量でパワーのある車種向けの新型CVTも登場していることから、もはやATの劣る点は見つからないほど、現在のCVTは進化していると言えます。

 

唯一、数ある指摘で一理あると言えるのが「高速走行時の燃費性能低下」で、CVTはATより燃費に優れるというイメージを、根底から覆す大きなデメリットです。

 

高速巡航時、エンジン側ベルトの直径は大きくなりますが、同時に摩擦面が増えベルトを押し出す力も増加するのですが、受け取るタイヤ側ベルトの直径は小さくなり受容力が減少します。

 

つまり、エンジンの押す力が持て余っている状態になり、受ける側が空回りしてしまう現象が発生、それが「パワーロス」に繋がり燃費効率が悪くなってしまうのです。

 

ただし、それは時速60km以上で走行している時の話で、通常の街乗りならやはりCVTの方が、ATより数段燃費性能が勝っているため、あまりいないでしょうが毎日高速道路で長距離移動しているユーザーを除けば、まず発生することがないデメリットです。

 

1つずつ論破していくと、現在搭載されているCVTに、明確なデメリットが無くなってしまいましたがそれもそのはず、今やCVTは国内メーカーすべてが新型モデルに採用する主力であり、欠陥だらけのトランスミッションがここまで浸透するわけありません。

 

CVTとATとの違いは?

 

ATとは、直進走行時に使用するD(ドライブ)レンジにシフトを入れ、アクセルを踏むだけで「1速→2速→3速→4速」とレンジが移動する変速機の総称で、「自動的」という点ではCVTと全く同じものです。

 

決定的な違いは、プーリーとベルトによって無段変速するCVTと異なり、ATにはリングギア・プラネタリギア・サンギアなどが存在することです。

 

そして、複雑なギアの組み合わせることによって、1・2速などでは回転数を遅くしてパワーを増し、3・4速など高いギアでは回転数上げスピードを出す仕組みになっており、構造的に言えばMTのメカニズムとさほど違いはありません。

 

MT同様、歯車の組み合わせでガッチリ駆動を伝達できることから、大排気量車やハイパワー車でも使えるメリットがある半面、多段化していくに従い構造的に複雑で高価になるというデメリットも。

 

結果、現在国内で売れ筋となっている軽自動車やコンパクトカーへの新規採用はめっきり減り、国産の場合は高級車・トラックが少ない活躍の舞台になりつつあるものの、国産メーカーの海外向けモデルに採用されるように、世界的にはまだまだ主役を張っています。

 

CVTとDCTの違いは?

 

CVTをなかなかヨーロッパ諸国が受け入れないのは、車をリーズナブルにしかも長く乗りたいと考えるユーザーが多いヨーロッパでは、構造的に最も簡易で価格も安く、燃費性能にも優れるMTの人気が、日本やアメリカに比べ圧倒的に根強いからです。

 

日本ではAT・CVTの新車比率が98%に達しているのに対し、ヨーロッパでのMT車比率は現在でもなんと80%以上、知人によるとAT登場当初には「日本人は燃費が悪く価格も高いAT車を好んで買うのか全く理解できない」なんてことを口走る方もいたようです。

 

もちろん、今ではヨーロッパでもATはずいぶん認知されましたが、どうもMTのキビキビした操作感を捨てきれないようで過去には、

 

・アルファロメオ「セレスピード」
・フィアット「デュアロジック」
・フェラーリ「F1マチック」

 

など、ギヤチェンジは自動化しているもののシフトチェンジは自分で行う、MTとATの中間である「セミAT」が採用され、人気を博してきました。

 

しかし、セミATには決定的な弱点があり付加された機能をONにすれば、シフトチェンジを自動化することも可能でしたがその際の変速ショックが大きく、スムーズさではATやCVTにまったく歯が立たなかったのです。

 

ところが、MT由来のエキサイティングな操作感と低燃費性、それにATに引けを取らないスムーズな自動変速を併せ持つ「DCT(デュアルクラッチトランスミッション)」が登場し、CVTよりも高トルクな車種に対応できたため、瞬く間にヨーロッパで普及しました。

 

簡単に構造を解説すると、「デュアル」という名前通りセミATを2基合体させたような構造をしており、それぞれのセミATを連携させることで弱点だったショック発生を軽減し、AT並みのスムーズなシフトチェンジを実現したのです。

 

また、それだけではなくシフトアップの効率が良く、変速中も加速が完全には途切れないため加速性能が非常に良く、自動変速でありながらなんとMTより燃費性能が優れているおまけつき。

 

例えば、2012年9月発表のアウディA3は、6速MTと5速DCTの2段構えでリリースされましたが、停止から時速100kmまでの到達時間でDCTの方がMTより0,3秒短いうえ、燃費性能においても0,2km/L勝り、さらにCO2排出量も少ないときています。

 

ただし、DCTは前述したとおり2つのクラッチを使用しますが、大型車の場合はオイルで冷却する湿式クラッチを採用可能ですが、小型車の場合は簡易で軽い乾式クラッチで対応するしか、スペース的にもコスト的にも選択肢がありません。

 

湿気が少なく、比較的渋滞も少ないヨーロッパでは問題化しませんでしたが、乾式クラッチを高温多湿で渋滞も多い日本で多用した場合、過熱による不具合が発生しやすく、乾式クラッチDCTを採用したホンダは、「フィット」などのリコールに悩まされています。

 

つまり、ヨーロッパおよび欧州系自動車メーカーとの関係性が深い中国ではDCTとMTが、日本とアメリカの都市部ではCVTが優勢で、その他の国や地域ではまだMTが元気というのが、「世界的トランスミッション戦線」の現状です。

まとめ

 

今回はCVTの仕組みと特徴、それに他の方式との違いを解説しましたが、変速時のショックなんて気にしないならAT車に乗り続けて問題ありませんし、国内外車種問わず大型モデルへの乗り換えを検討しているなら、多くの利点があるDCT搭載車を選ぶのもアリです。
また、スポーツカーでレーシーな走行を楽しみたいユーザーは、MTをチョイスすることも多いですが、国内最強の呼び声も高い日産・GT-Rには、ボルグワーナー製の6速DCTが採用されています。

 

セットアップスイッチで「Rモード」を選べば、人ではとても再現不可能なわずか0.2秒でのシフトチェンジ可能で、スリリングかつダイレクトな走行を満喫することができるので、もしGT-Rに試乗する機会があればぜひ体感してみてください。